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2013 個展 物語のひとしずく

 

青い鳥

 そそぎ込む月の光にも、ほほえむ月の輝きにも、上ってくる夜明けの光にも、ともされるランプの光にも、それからあなたたちの心の中のよい明るい考えの中にも、いつもわたしがいて、あなたたちに話しかけているのだということをわすれないでください。

                         メーテルリンク『青い鳥』より

 

アラネア

 一夜ごとに二握りの黄金を百夜にかけてしぼらせ、したたる露をあつめて産湯をつかわせたと云われていた。その露がしみたために、ヒメの身体は生まれながらに光りかがやき、黄金の香りがすると云われていた。

                         坂口安吾『夜長姫と耳男』より

 

九月姫

 ウグイスは羽をひろげて、まっすぐに、あおい空へとんでいきました。

お姫さまは、わっと、泣きだしました。

自分のしあわせよりも、自分のすきな人のしあわせを、

だいいちに考えるのは、

とても、むずかしいことだからです。

サマセット・モーム『九月姫とウグイス』より

 

瑠璃・玻璃

 おばあさんは、眼鏡をかけて、この美しい、たびたび自分の家の前を通ったという娘の顔を、よく見ようとしました。すると、おばあさんはたまげてしまいました。それは、娘ではなくて、きれいな一つのこちょうでありました。

                          小川未明『月夜と眼鏡』より

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